第22回 その現場は自殺ではありませんでした。

自由変更部分

キーパーズ有限会社
代表取締役
宅地建物取引士
吉田太一 さん

2002年、日本初の遺品整理専門会社キーパーズを設立。年間1600件以上の遺品整理に携わるほか、スムーズな相続を実現するための不動産をはじめとした各種手続き、リサイクルなどあらゆる相談に応じている。さだまさし原作の映画「アントキノイノチ」のモデルとしても知られる。日本ペンクラブ会員。

 もう10年近く前の話になりますが、自宅を売却したいので相談に乗ってほしいという電話がありました。

 ご住所をお聞きして訪問させてもらおうと地図で住所を調べた時、わたしは〝 えっ! 〟と声を上げてしまいました。
 なぜ驚いたのかというと、その3年以上前に私がその家の遺品整理を行った現場だったからです。

 そしてその現場というのは、玄関の横の壁がはがされていたり、部屋のあちらこちらが壊されていて、リビングや廊下は血の海と化していたのです。何千件もの現場を見てきた私ですらその凄惨さが強烈すぎて脳裏に焼き付いて離れないほどだったからです。私はそのことを、気を遣いながら確認させてもらいました。

「あの、3年前ぐらいだと思うのですが、このご自宅のお片づけに私が伺ったと思うのですが…」
「そうです。あの時は有り難うございました」
「いえこちらこそ、でもあの時いらっしゃらいませんでしたね。たしか依頼者は大学生くらいの女性だったような気がするのですが…」
「あれは、わたしたちの娘です」
「言い辛いことをお聞きするかもしれませんが、あのご自宅でご家族が自殺されたのではなかったのですか?」
「亡くなったのは事実なんですが息子は自殺ではないんです・・・」
「はい?」
「私たち夫婦が息子に手をかけてしまったんです・・・だから私たち夫婦は警察におりまして娘が代わりに立ち会ったので私たちは居なかったのです」
 私はびっくりしてしばらく次の言葉が見つかりませんでした。
「驚かれたでしょう・・・ 申し訳ありません。それでも可能であれば売却をお願いしたいのですが」
「もちろん、お手伝いはさせて頂きますが、驚きました・・・」
「私が2年、妻が1年半警察にお世話になっていましたので、私が自宅に帰って生活しだしたのは正確に言うとまだ1年ぐらいなのですが、一応リフォームもしているのであの時よりは綺麗になっていますが…」

 実は、息子様は28歳まである会社で働いていたようですが、社内トラブルから精神的に参ってしまい会社を退社し自宅内で引き籠り、家族に暴力をふるうようになり、妹は危ないので親戚の家に預かってもらっていたそうですが、このままでは自分たちが殺されると思い夫婦で相談した結果だったようです。
 年に何度も警察が来るという状況で、警察もご近所もこんなことにならなければいいなと思っていた矢先の出来事だったということです。ご夫妻はとても真面目で人柄がよい方なので、ご近所も警察も誰一人としてご夫婦を悪く言う人は居なかったそうです。

 今回に似たようなケースは決して少ない話ではありません。人の死にともなって発生する遺品整理の現場では様々な家族やその人生を垣間見ることがあるのです。

遺品整理や残置物の撤去

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