第3回 あっ!これが死臭か…(1)

自由変更部分

キーパーズ有限会社
代表取締役
宅地建物取引士
吉田太一 さん

2002年、日本初の遺品整理専門会社キーパーズを設立。年間1600件以上の遺品整理に携わるほか、スムーズな相続を実現するための不動産をはじめとした各種手続き、リサイクルなどあらゆる相談に応じている。さだまさし原作の映画「アントキノイノチ」のモデルとしても知られる。日本ペンクラブ会員。

 17年ほど前で創業して間もない頃のある日、一本の電話が鳴りました。「大変なことになっているんですけれど、なんとかしてくれませんか?」。私は、何がどんなに大変なのか想像はつきませんでしたが、とにかく「見積りに伺います!」と言って会社を飛び出しました。指定場所は何度か通ったことのある場所で、見覚えのある少し古いアパートです。依頼者はまだ現地には来られていませんでしたが、部屋の確認だけしておこうと思い、お部屋に向かうため、アパートの玄関を開けようとしたときでした。とてつもない異臭が突き刺すように鼻に飛び込んできたので、私は思わず"ウァッ!! "と、声を出して玄関から逃げるように離れてしまいました。まだ依頼者が到着する前だったのでよかったのですが、一度も経験したことのない衝撃を受けたのです。

 その時はまだ、その異臭が何の臭いなのかはわかっていませんでした。遺品整理らしき仕事は始めていましたが、キーパーズを設立する前でしたので、すべてが手探りな状態で、消臭する機器や薬品をなにも準備していなかったのです。5分後に依頼者が到着され、一緒にお部屋の中を確認をするため、再度アパートの玄関に向かいました。もちろん依頼者の前ですし"2度目?"ですから、心構えはできています。依頼者に続き、恐る恐るお部屋の前まで来ましたが、この時はもう気持ちよりも先に鼻が開き直っていたような記憶があります。そしてお部屋のドアが開き、依頼者が「実は一人で住んでいた父親が亡くなったんです。警察のお話ではおよそ死後3週間経過していたんではないかと言われました」と切り出したのです。私は、驚きと衝撃を受けながらも平静な顔を保ち、「お気の毒様でしたね」と言葉をお掛けしました。しかし、心の中では、"あっ!これが死臭か…"と叫んで、生まれて初めて"死臭"という単語を使ったことを覚えています。

 確かに部屋の中は"大変なことに"なっていました、ご遺体のあった場所には真っ黒な染みがついており、部屋中がゴミ屋敷状態でしたので遺品の片付けだけでなく、消毒や洗浄もしないといけません。さらに古いアパートでしたので六畳の和室の畳は撤去し、新調の手配や壁の塗り替えまですることになったのです。その多くはしたこともない仕事だったので、実はタウンページを見ながらさまざまな業種を探し、電話してお願いしました。その結果、お部屋は綺麗になったのですが、最後に残ったのが"死臭"でした。しかし、これだけは専門業者がタウンページでも見つからず、自分で何とかするしかありませんでした。そして、横を向くとアパートのオーナーさんが、すがるような目で私を見ていたのです。

 続く

遺品整理や残置物の撤去

お問合せは 「キーパーズ」 へ

全国共通フリーダイヤル
( 受付10:00〜22:00 )

自由変更部分 0120-754-070

年中無休・相談見積無料・即日対応OK   https://keepers.jp/